AMD EPYC 9996は、NVIDIA Vera CPUより本当に2倍以上速いのでしょうか。AMDは2026年9月18日、EPYC 9006シリーズの詳しいベンチマークを公開し、最上位の256コアモデルがVera搭載環境の2.24倍に達したと発表しました。
この数字は、あらゆる処理を2.24倍でこなすという意味ではありません。AMDの発表が比較したのは、サーバー向けCPUの整数演算スループットを測るSPECrate 2026 Integerです。この記事では測定結果と構成を分け、世代間の伸び、Veraとの設計差、導入判断で見るべき条件を整理します。
AMDが公開したベンチマークの概要
AMDが前面に出したのは、2ソケット環境における処理量と、コア当たり性能の2種類です。前者は多数の仕事を同時に処理する能力、後者はコア数の差をならした性能を示します。
| 比較項目 | AMDの公表結果 | 比較の範囲 |
|---|---|---|
| EPYC 9996とNVIDIA Vera | 2.24倍 | SPECrate 2026 Integerのプラットフォーム性能 |
| 96コア高周波EPYCとVera | 1.2倍 | 同テストのコア当たり性能 |
| EPYC 9996とEPYC 9965 | 約1.78倍 | 同テストの世代間性能 |
| EPYC 9996とXeon 6980P | 2.37倍 | 同テストのプラットフォーム性能 |
| EPYC 9996とVera | 推定3.4倍 | 100kWラックでの6ワークロード平均 |
AMDの注記では、2ソケットのEPYC 9996を推定スコア2070、Vera環境を925としています。2070を925で割った値が約2.24です。いずれも2026年7月22日時点の社内測定とエンジニアリング推定で、第三者機関が同じ2台を並べて測った結果ではありません。
EPYC 9996は前世代のEPYC 9965にも約78%の差を付けました。競合との倍率より比較条件をそろえやすく、Zen 6世代で増えたコア数とメモリ帯域が、サーバー全体の処理量へ結び付いたかを見る材料になります。
EPYC 9996の256コア構成
AMDの製品仕様によると、EPYC 9996は256コア512スレッド、L3キャッシュ1024MBを備えます。ベースクロックは2.55GHz、最大ブーストは4.1GHz、Default CPU Powerは600Wです。
| 仕様 | EPYC 9996 |
|---|---|
| CPUアーキテクチャ | Zen 6c |
| コア/スレッド | 256コア/512スレッド |
| クロック | 2.55GHz/最大4.1GHz |
| L3キャッシュ | 1024MB |
| メモリ | 16チャネルDDR5 RDIMM/MRDIMM |
| メモリ速度 | 8000MT/s/12800MT/s |
| メモリ帯域 | 最大1638GB/s(MRDIMM) |
| PCI Express | PCIe 6.0、96レーン |
| Default CPU Power | 600W |
前世代EPYC 9965は192コアでした。EPYC 9996はコア数を約33%増やし、メモリも12チャネルDDR5-6400から16チャネルへ拡張しています。大量の仮想マシン、データベース要求、Web処理を並列に走らせる環境では、コア密度とデータ供給能力の両方がスループットを押し上げます。
AMDはNGINX、Redis、MongoDB、OpenSSL、Java、トランザクション処理でもEPYC 9996を測定しました。Xeon 6980PやAWS Graviton5を含む比較で、用途ごとに2.4〜3.7倍の差を公表しています。代表値だけでなく、導入予定のソフトウェアに近い項目を選んで読む必要があります。
NVIDIA Veraとの設計の違い
NVIDIA Veraは、88基のOlympusコアと176スレッド相当の同時処理能力を備えるArm CPUです。単一のコンピュートダイにコア、キャッシュ、I/Oをまとめ、LPDDR5Xで最大1.2TB/sのメモリ帯域を確保します。Vera Rubin NVL72ではNVLink-C2Cを通じてGPUと接続し、エージェントAIの応答時間とGPU利用率を重視した設計です。
EPYC 9996は256コアを1ソケットに積み、x86環境で多数の処理を並列化する方向へ振っています。Veraは88コアの単一ダイ、高いコア当たり帯域、GPUとの密結合が特徴です。両製品は同じデータセンターCPUでも、次の強みが異なります。
- EPYC 9996:高いコア密度、既存x86ソフトウェア、16チャネルDDR5、汎用サーバー処理
- Vera:単一ダイの88コア、LPDDR5X、NVLink-C2C、NVIDIA GPU基盤との統合
SPECrateの総合スループットでは、コア数が約2.9倍のEPYC 9996が有利です。一方、NVIDIAはVeraについて、負荷時の遅延、コア当たりメモリ帯域、GPUとCPUの連携を訴求しています。2.24倍という結果は、EPYCのコア密度を反映した整数処理量の比較として読むと位置付けが明確です。
2.24倍を読むための測定条件
AMDの見出しとなった比較では、EPYC 9996とVeraの双方にGCC 15.2を用い、同じSPECrate 2026 Integerで推定しています。ただし、Tom’s Hardwareの検証は、AMDが公開した詳細なサブテストの一部にGCC 16.1とGCC 15.2の比較が含まれると指摘しました。GCC 16.1はZen 6への対応を加えており、コンパイラの最適化差が結果へ入ります。
電力条件も数値の意味を変えます。256コアEPYC 9996の電力枠は600Wです。コア当たり性能のグラフでは、同じチップを96コアに制限した構成にも大きな電力枠を与えた測定があります。販売される96コア高周波モデルの条件と一致する項目を見極めるには、グラフの脚注まで確認する必要があります。
100kWラックで3.4倍という値は、実機ラックを一式組んだ測定ではなくモデル計算です。AMDは2ソケットノードの消費電力、ラックへ収めるノード数、6種類の処理性能を組み合わせています。データセンターの電力密度を含めた試算としては有用ですが、冷却方式、ネットワーク、GPU構成、ソフトウェアライセンスを加えた設備全体の結果とは分けて扱います。
データセンター導入への影響
EPYC 9996の結果は、AI処理でもCPUが担う仕事が増えている流れを示します。大規模言語モデルの推論自体はGPUが中心でも、検索、コード実行、データベース照会、暗号化、仮想環境の管理はCPUが処理します。複数のAIエージェントが同時に動くほど、CPU側の並列処理量がGPUの稼働率にも影響します。
導入時には、次の順で候補を絞ると比較しやすくなります。
- NGINX、Redis、データベース、HPCなど実際の負荷に近い測定を選ぶ
- 1ソケットか2ソケットかをそろえる
- CPU単体の電力に加え、メモリと冷却を含むノード電力を確認する
- コア単位のソフトウェア料金と、必要なサーバー台数を合算する
- GPU接続が中心ならPCIe 6.0とNVLink-C2Cを含むシステム構成で比べる
AMDはEPYC 9006をすでに生産中と説明し、主要OEMの対応サーバーとクラウド事業者による導入を2026年内に始める計画です。公表ベンチマークは選定の入口になり、実際の調達ではOEMが公開する構成別テストと利用ソフトウェアの検証結果が次の判断材料になります。
まとめ
AMDの新資料では、256コアのEPYC 9996がSPECrate 2026 Integerのプラットフォーム性能でNVIDIA Veraの2.24倍、96コア構成がコア当たり1.2倍とされました。256コア、16チャネルメモリ、最大1638GB/sの帯域は、多数の処理を同時に走らせるEPYCの方向性を表しています。
数値はAMDの社内測定と推定に基づき、詳細項目にはコンパイラや電力枠の違いがあります。2.24倍は整数演算の総処理量、3.4倍は100kWラックのモデル計算として使い分けるのが要点です。EPYC Veniceの発表経緯やVeraの88コア設計も関連記事で確認し、CPU単体の倍率から実際のサーバー構成へ比較を進めてください。
