「CPUが宇宙で使われるって、普段のパソコン用と何が違うの?」。そんな疑問を持った方に向けて、この記事ではIntelが発表した宇宙用途向けプロセッサ「Starfire」について解説します。結論から言うと、Starfireは普段私たちが使うノートPC向けチップ「Panther Lake」の技術をベースにしながら、放射線や極端な温度に耐えられるよう作り直した特殊なSoCです。HotHardwareやNotebookCheckなど複数の海外メディアが伝えた仕様と開発背景を、公開されているIntelの資料と突き合わせて整理しました。読み終える頃には、なぜ今Intelが宇宙向けチップに参入したのか、そして手元のパソコン用CPUとの技術的なつながりが見えてくるはずです。

Starfireとは何か

Starfireは、Intelが2026年7月に発表した宇宙・過酷環境向けのシステムオンチップです。CPU・GPU・NPUを1つのパッケージに統合するFoveros技術を使い、人工衛星や宇宙機に搭載することを想定して設計されています。開発の主な目的は米国政府向けとされており、Intel Foundryの先端プロセスを軍事・宇宙分野に応用する狙いがうかがえます。単なる技術デモではなく、Intelが公開したセールシートに基づく製品情報として報じられている点が特徴です。

基本スペック

Starfireは8コア構成で、パフォーマンスコアが4基、低消費電力コアが4基というPanther Lake系譜のコア配分を踏襲しています。GPUはXeアーキテクチャの4コア・64実行ユニット構成、NPUは最大75TOPSのAI性能を持ちます。製造プロセスはCPUとNPUタイルが最先端の「Intel 18A」、GPUタイルは「Intel 3」と、2種類のプロセスを組み合わせているのも見どころです。対応メモリはLPDDR5とDDR5の両方で、PCIe Gen4を12レーン搭載しています。

低電力版とパフォーマンス版の2ラインナップ

Starfireには用途に応じた2つのバリエーションが用意されています。低電力版はTDP10Wでパフォーマンスコアが1.0GHz、低消費電力コアが850MHz駆動、AI性能は45TOPSです。一方のパフォーマンス版はTDP35Wでパフォーマンスコアが3.1GHz、低消費電力コアが2.1GHzまで駆動し、AI性能は75TOPSに達します。衛星の電力事情や搭載スペースに合わせて選べる設計になっているとみられます。

極限環境への耐久性

宇宙用チップとして欠かせないのが、過酷な環境への耐久性です。Starfireの動作保証温度は-55℃から125℃までと非常に幅広く、地上のコンシューマー向けCPUでは想定しない領域までカバーしています。また、放射線による誤作動を防ぐため、累積線量(TID)保護やラッチアップ防止、単一事象効果の軽減機能を備えています。ただし放射線耐性の試験そのものは現在も進行中とされており、全ての認証が完了した段階ではない点には注意が必要です。10年以上の長期動作を前提に設計されているのも、簡単に交換や修理ができない宇宙用途ならではの要件と言えます。

Panther Lakeとの技術的なつながり

Starfireのベースになっているのは、Core Ultra 9 285Kなどデスクトップ向け現行世代とは異なる、モバイル向けの次世代アーキテクチャ「Panther Lake」系の設計です。当サイトでも既報の通り、Panther Lakeの主力プロセスである18Aは歩留まり問題を克服しつつあると報じられており、Starfireの実現にはこの18Aの量産安定化が欠かせません。地上のノートPC向けチップと宇宙用チップが同じ設計思想・製造基盤を共有している点は、Intelの18A戦略の広がりを示す事例として注目できます。

今後のスケジュール

現時点でIntelは、Starfireのエンジニアリングサンプルを2026年第3四半期に提供開始する計画を示しています。ただし記事執筆時点でスペックは確定ではなく、今後の変更可能性についてもIntel自身が言及済みです。放射線耐性試験の結果次第では、仕様や投入時期が調整されることも考えられるでしょう。製造は米国内で行われる予定で、Intel Foundryの先端プロセスを国内向けの防衛・宇宙需要につなげる狙いも透けて見えます。

まとめ

Intelの宇宙用プロセッサ「Starfire」は、Panther Lake由来の8コア設計をベースに、放射線耐性や広い動作温度範囲を備えた特殊なSoCです。低電力版・パフォーマンス版の2構成があり、最大75TOPSのAI性能を持つ点も含め、地上のノートPC向けチップとの技術的な連続性がうかがえます。2026年第3四半期のサンプル提供に向けて、今後さらに詳細な仕様が明らかになっていくはずです。Panther Lake世代の18Aプロセスがどこまで信頼性を高めているかは、Nova Lakeの次世代機能にも影響する話題なので、あわせて追いかけておくと理解が深まります。