MediaTekは2026年9月21日、ノートPC向けSoC「Dimensity CX C10 Max」を発表しました。新設したDimensity Compute Experiences(CX)ファミリーの第1弾で、Googleが展開するAIノートPC「Googlebook」への搭載を予定しています。

注目点は、TSMCの3nmプロセス、8コアCPU、11コアGPU、最大55 TOPSのNPUを1つのチップにまとめた構成です。本記事では、MediaTekが公開した仕様とGooglebookでの役割、購入判断に必要ながら未公表の情報まで整理します。

Dimensity CX C10 Maxの発表内容

MediaTekの発表によると、Dimensity CX C10 Maxは薄型・軽量のプレミアムGooglebookを対象とするフラッグシップSoCです。MediaTekは省電力性を生かし、ファンレス設計や終日駆動を可能にするプラットフォームとして位置付けています。

主要仕様は次のとおりです。

項目 公開仕様
製造プロセス TSMC 3nm
CPU 8コア(Cortex-X925×1、Cortex-X4×3、Cortex-A720×4)
CPU最大クロック Cortex-X925が最大3.73GHz
キャッシュ L3 12MB、SLC 10MB
GPU Arm Immortalis-G925 MC11(11コア)
NPU MediaTek NPU 890、最大55 TOPS
メモリ LPDDR5X、最大9,600Mbps
ストレージ UFS 4.0
無線 Wi-Fi 7(最大7.3Gbps)、Bluetooth 6.0

MediaTekは8基を「All Big Core」と表現していますが、CPUコアは3種類です。最も高性能なCortex-X925を1基、Cortex-X4を3基、効率との均衡を取るCortex-A720を4基組み合わせています。公式仕様ページでは、X925に2MB、X4に各1MB、A720に各512KBのL2キャッシュを備える構成も確認できます。

CPUは3種類のコアを合計8基備えます。バックグラウンド処理から瞬間的に負荷が高まる作業まで、3段階のCPUコアを使い分ける設計です。3nmプロセスやファンレス対応の訴求も含め、性能と消費電力の両立を狙っています。

Googlebook向けAI機能

Dimensity CX C10 Maxは、最大55 TOPSのMediaTek NPU 890を搭載します。対応データ形式はINT8、INT16、FP16、BF16で、生成AIや自律的にタスクを進めるエージェントAIの処理を想定した設計です。

Googleは2026年5月、Androidのアプリ基盤とChromeOSで培ったブラウザー技術を組み合わせ、Gemini Intelligenceを中心に据える新しいノートPCカテゴリーとしてGooglebookを発表しました。カーソルで選んだ情報に応じてGeminiが操作を提案する「Magic Pointer」など、AIをOSの操作へ組み込む方針を示しています。

MediaTekはNPU 890がGooglebookのGemini Intelligenceを端末上で処理し、応答時間とプライバシーの両面に寄与すると説明しました。CPUやGPUとは別にAI専用回路を持たせるため、常時利用するAI機能を低い電力で動かしやすくなります。実際の応答速度やバッテリーへの効果は、搭載機の冷却設計、メモリ容量、ソフトウェア最適化を含めた製品単位の検証が必要です。

映像・カメラ・接続機能

内蔵GPUは11コア構成のArm Immortalis-G925 MC11です。4K/60fpsのHEVC、AVC、VP9、AV1の10bitデコードに対応し、内蔵画面は最大4K/60Hz、外部画面はDisplayPort MSTを通じて最大2台の4K出力をサポートします。ゲーム性能を判断できる第三者ベンチマークは、発表時点で公開されていません。

ビデオ会議向けにはImagiq 1090 ISPを統合しました。最大32MPのカメラセンサー、電子式手ぶれ補正、HDR動画、自動ズーム、被写体への継続フォーカスに対応します。別チップへ処理を渡さずSoC内で映像を扱えるため、薄型Googlebookでもカメラ機能を充実させやすい構成です。

通信はWi-Fi 7で最大7.3Gbps、Bluetooth 6.0はデュアルエンジン方式に対応します。高速な無線LANはクラウド上のデータへアクセスする場面、NPUは端末内でAIを処理する場面を受け持ちます。Googlebookが想定するローカルとクラウドの併用を、1つのSoCで支える設計といえるでしょう。

Kompanio Ultra 910との違い

Tom’s Hardwareの分析では、CPUの内訳、GPU、NPU、L3キャッシュ、SLCが既存のKompanio Ultra 910と共通していると指摘されています。公開仕様から確認できる明確な差は、LPDDR5Xの上限が8,533Mbpsから9,600Mbpsへ上がった点です。

名称と対象市場は変わりました。Kompanio Ultra 910がChromebook Plus向けであるのに対し、C10 MaxはプレミアムGooglebook専用として発表されています。MediaTekは取材に対し、展開先をGooglebookに絞り、Windows搭載機も現時点で確認していないと説明しました。

メモリ帯域の向上は、CPUとGPUが同じメモリを共有するSoCで効果が見込めます。CPU性能の伸び幅は、共通するキャッシュや演算器、搭載機の消費電力枠と冷却、OS側の最適化から評価します。

公表ベンチマークの読み方

MediaTekはSnapdragon X Elite X1E-84-100との比較で、12W時のGeekbench 6.5マルチコア性能が最大15%高く、シングルコア処理時の消費電力を最大50%削減したと説明しています。測定環境は、C10 MaxがChromeOSのリファレンスボード、比較対象がWindows 11搭載のGalaxy Book4 Edgeです。

OS、筐体、電力設定が揃っていない比較は、C10 Max搭載製品の優劣を確定する第三者ベンチマークにはなりません。数値から読み取れるのは、MediaTekが初代Snapdragon X Eliteを競合として設定し、低消費電力域を重視している点です。発売後は同じアプリ、同じ電力条件でのCPU性能、AI処理速度、連続負荷時のクロックを確認すると、実力を比較しやすくなります。

発売前に残る確認項目

MediaTekはC10 Maxを搭載する「今後登場するプレミアムな超薄型Googlebook」に言及しましたが、発表時点では機種名、価格、発売日を公表していません。SoCのTDP、搭載可能なメモリ容量、PCI ExpressやUSBの全仕様も購入比較に必要な情報です。

確認したい項目は次の4点に絞れます。

  • 実際のGooglebookに設定される消費電力と冷却方式
  • メモリ容量別の構成と本体価格
  • Snapdragon XシリーズやIntel搭載機との同条件ベンチマーク
  • Gemini Intelligence使用時の処理速度とバッテリー駆動時間

MediaTekが公開した仕様は、C10 Maxの設計目標を理解するには十分です。製品としての評価は、搭載機の詳細と独立した測定結果が揃う段階で固まります。

まとめ

Dimensity CX C10 Maxは、MediaTekがGooglebook向けに投入するDimensity CXファミリー初のSoCです。3nmの8コアCPU、11コアGPU、55 TOPS NPU、LPDDR5X-9600を統合し、薄型・ファンレスのAIノートPCを狙います。

CPU構成などはKompanio Ultra 910と共通点が多く、今回の要点は高速化したメモリとGooglebook向けの新しい市場展開です。搭載機の価格、電力枠、第三者ベンチマークが公開されたら、公式の比較値と照合して選びましょう。MediaTekの最新モバイルSoCも確認したい方は、関連記事のDimensity 9600 Pro解説へ進んでください。