「世界初のデュアルV-Cache」と聞くと、ゲーム性能も大幅に伸びていそうな期待を持ってしまわないでしょうか。実際のところは、そう単純ではありません。Ryzen 9 9950X3D2は208MBという圧倒的なキャッシュ容量を武器にしていますが、ゲーム性能の伸び幅は多くのレビューで「わずか」と評価されています。本記事では、GamersNexusやTom’s Hardwareなど複数のレビューをもとに、9950X3D2の実際のゲーム性能を整理します。読み終える頃には、ゲーミング目的でこのCPUを選ぶ意味があるかどうかが判断できるはずです。

デュアルV-Cacheという新技術

Ryzen 9 9950X3D2は、16コア32スレッドの2つのCCD(コアを束ねたダイ)の両方に3D V-Cacheを積んだ、世界初のデスクトップ向けCPUです。片方のCCDにのみV-Cacheを搭載するRyzen 9 9950X3Dに対し、9950X3D2はL3キャッシュ192MB、L2と合わせて208MBの総キャッシュを備えます。ベースクロック4.3GHz、最大ブースト5.6GHzで動作し、ゲーム性能を左右するキャッシュ容量では現行デスクトップCPUの中でも突出した存在です。

実測されたゲーム性能の伸び幅

GamersNexusの検証では、9950X3Dに対する9950X3D2の性能差は多くのタイトルで0〜6%程度にとどまりました。Baldur’s Gate 3では178FPS平均を記録し、9950X3Dから5%の改善でしたが、価格差は33%に達します。Dragon’s Dogma 2では138FPS平均でトップに立ったものの、リードは4.8%です。タイトルによっては差がほぼ出ないケースもあり、Tom’s Hardwareはこの関係を「キャッシュは増えたが、出費も増えた」と評しました。

非X3Dモデルとの比較では効果が大きい

一方で、V-Cacheを持たないRyzen 9 9950Xと比較すると話は変わります。9950X3D2は9950Xに対して21〜71%のゲーム性能向上を示しており、V-Cache自体の効果はここでしっかり確認できます。つまり9950X3D2の課題は「V-Cacheが効くかどうか」ではなく、「すでにV-Cacheを持つ9950X3Dからさらに上乗せする価値があるか」という点に絞られます。

伸び幅が小さい理由

9950X3Dは片方のCCDにしかV-Cacheがないため、Windowsのスレッド割り当てがキャッシュを持たないCCDにまたがると、レイテンシが悪化する場面がありました。AMDはドライバー側の制御である程度緩和していたものの、根本的な解決ではありませんでした。9950X3D2は両方のCCDにV-Cacheを積むことで、この問題そのものを解消しています。ただし、ダイをまたぐ通信自体は依然としてゲーム性能に不利に働くため、9950X3D2でもコアパーキング(一部コアを休止させる制御)は引き続き使われています。伸び幅が0〜6%にとどまるのは、キャッシュが足りていないからではなく、そもそも9950X3Dの時点でキャッシュの恩恵をほぼ使い切っていたことの裏返しといえます。

解像度によって印象が変わる

CPUの違いが表れやすいのは、GPUの処理が追いつきやすいフルHDなどの低い解像度です。4KのようにGPU側の負荷が支配的になる解像度では、CPUの差はさらに見えにくくなります。9950X3D2を検討する際は、自分がどの解像度でプレイするかによって、体感できる差の大きさが変わってくる点も踏まえておくとよいでしょう。

ゲーミング用途での結論

GamersNexusは9950X3D2について、900ドルの価格に見合うほどの性能向上が見られないとして、購入に否定的な結論を出しています。純粋にゲーミング性能だけを求めるなら、同じアーキテクチャのRyzen 7 9850X3Dなど、より安価なX3Dモデルで同等のフレームレートが得られるとする指摘も見られます。9950X3D2の強みはゲーム単体の性能ではなく、後述する動画編集やレンダリングを含めた複合用途にあります。

まとめ

Ryzen 9 9950X3D2は208MBという圧倒的なキャッシュを備えながらも、ゲーム性能だけを見れば9950X3Dからの伸びは0〜6%程度に収まります。純粋なゲーミング目的であれば、価格差に見合う効果は限定的です。9950X3Dとの違いをさらに詳しく知りたい方は、比較記事やコスパ検証記事もあわせてご覧ください。