CPUを買う側だった巨大IT企業が、また1社、作る側に回ろうとしています。TikTokや抖音を運営するByteDanceが自社CPUの開発を進めていると、Reutersが独占報道しました。背景にあるのはIntelとAMDの急激な値上げです。本記事ではReutersと南華早報という2系統の報道を突き合わせ、何がどこまで報じられているのか、なぜ今なのか、そして中国のデータセンター市場に何が起きつつあるのかを整理します。読み終える頃には、GoogleやAmazonに続く自社チップの波が中国勢にも及んだ構図がつかめるはずです。

Reutersが報じた開発計画

Reutersは5月28日の独占記事で、ByteDanceが自社データセンター向けのCPU開発を進めていると報じました。設計はArmベースとRISC-Vベースの2本立てで進んでおり、どちらが自社のワークロードに合うかを見極める段階のようです。開発は初期段階とされ、複数の外部パートナーに設計支援とファウンドリの生産枠確保を持ちかけているとも伝えられています。用途は自社サーバーでの内部利用が前提で、AIエージェント基盤のCozeなどを支える計算資源に充てる想定と報じられました。記事はLiam Mo記者とFanny Potkin記者の署名入りで、社名を伏せた関係者への取材に基づくものです。

南華早報が伝えた量産時期

続報として南華早報は、より踏み込んだ日程を伝えています。設計完了が2027年初頭、量産と実戦投入が2027年後半という観測です。さらに、初期バージョンのCPUは2025年末から社内で試験運用されているとの情報もあります。ReutersとSCMPで温度差はあるものの、開発の存在自体は両者が一致して報じており、単発の飛ばし記事とは考えにくい状況です。いずれも確定発表ではないので、日程は観測として読むのが妥当でしょう。

引き金になったIntelとAMDの値上げ

報道が共通して挙げる動機は価格です。IntelとAMDはここ数か月、四半期ごとに10%から最大35%という急な値上げを重ねてきたと伝えられています。メモリ高騰と同時期にCPU調達コストまで跳ね上がり、豆包(Doubao)やSeedanceといったAIサービスの計算需要は膨らむ一方。買い続けるより作ったほうが安い、という判断に傾くには十分な条件がそろっています。

Qualcommとの協業案

南華早報の報道には、Qualcommと協業を協議中という話も出てきました。狙いはQualcommが持つTSMCなどの生産キャパシティへのアクセスだとされています。先端プロセスの生産枠は世界的に逼迫しており、新規参入者が単独でTSMCの枠を確保するのは簡単ではありません。実績ある半導体企業を挟むルートは、その近道になり得ます。ただしこれも協議段階の報道で、正式な提携発表はありません。

確定情報と観測の整理

ここまでの情報を、報じた媒体ごとに分けておきます。

内容 出どころ
自社CPU開発の存在 ReutersとSCMPが一致して報道
ArmとRISC-Vの2本立て Reuters
2027年後半の量産 SCMP(観測)
2025年末からの社内試験運用 SCMP(観測)
Qualcommとの協業 SCMP(協議段階)

いずれもByteDanceの公式発表ではなく、関係者情報に基づく報道です。量産時期や採用アーキテクチャは続報で変わり得るものとして読むのが安全でしょう。逆に、開発の存在自体は独立した2つの報道機関が一致しており、ここだけは確度が高いといえます。

中国勢に広がる自社シリコンの波

ByteDanceの動きは単独の出来事ではありません。中国では国策として独自アーキテクチャのLoongsonがサーバーCPUを出し続けており、AlibabaやHuaweiも自社設計チップを持ちます。米国の輸出規制と価格高騰が続くほど、中国の大手ほど自社シリコンに寄っていく。この流れの中にByteDanceも加わった、と見るのが自然です。米国が先端GPUの対中輸出を絞ってきた経緯もあり、調達の不確実性そのものが自社開発の追い風になっています。x86の牙城だったデータセンターCPU市場が、Arm、RISC-V、独自アーキテクチャへと割れていく動きは今後も追う価値があります。

まとめ

ByteDanceの自社CPU開発は、ArmとRISC-Vの2本立てで進み、早ければ2027年後半の量産という観測まで出ています。引き金はIntelとAMDの値上げと、AIサービスの計算需要の急増でした。続報が出るたびに、確度は更新されていくはずです。データセンターCPUの勢力図がどう動くかは、QualcommのC1000やLoongsonの新チップの記事でも扱っています。関連記事からどうぞ。