GPUばかりが注目されるAIブームの陰で、CPUの需要はどうなっているのか。答えを持っているのは、x86もArmもRISC-Vもまとめて製造している世界最大のファウンドリです。TSMCが7月16日に発表した2026年第2四半期決算は、数字そのものが過去最高だっただけでなく、CEOの口から「CPU復権」がはっきり語られた回でもありました。本記事では決算の要点を整理し、なぜエージェントAIがCPU需要を押し上げるのか、そしてPCパーツの価格を気にする私たちに何が波及するのかまで掘り下げます。
第2四半期決算の中身
TSMCの公式発表によると、第2四半期の売上高は402億ドルで前年同期比33.7%増、前四半期比でも12%伸びました。純利益は7,065億台湾ドルで前年同期比77.4%増。粗利率は67.7%に達しています。受託製造業でこの利益率は異常値に近く、先端プロセスの値上げをものともせず顧客が殺到している状況が読み取れます。背景にあるのは、値上げしても顧客が離れない先端プロセスの独占的な地位です。
台湾ドル建ての数字と第3四半期見通し
台湾ドルベースでは売上高1兆2,703億台湾ドル、純利益7,065億台湾ドル、希薄化後EPSは27.25台湾ドルでした。前四半期比でも売上が12%、純利益が23.4%伸びており、成長はむしろ加速しています。四半期ごとに1割ずつ大きくなる規模の会社ではないはずが、それが常態化してきました。第3四半期のガイダンスは売上446億〜458億ドル、粗利率65〜67%と、強気の見通しを崩していません。
HPC部門66%という構成比
内訳で目を引くのがHPC部門でした。前四半期から20%伸び、全売上の66%を占めています。スマートフォン向けが主力だった数年前のTSMCとは、もう別の会社と言っていい構成比です。7nm以下の先端プロセスがウエハー売上の77%を占めており、AI関連の先端チップが業績を引っ張る構図がいっそう強まりました。AI偏重というより、もはや本業がAI向けだと言い切れる比率です。スマートフォン向けの成長が鈍った穴を、データセンター需要が完全に埋めた形になります。
CEOウェイ氏が語ったCPU復権
決算説明会でCEOのC.C.ウェイ氏は、エージェントAIの登場でAIデータセンターにおけるCPUの役割が復活しつつあり、AIアクセラレータに加えてさらなるシリコン需要を生んでいると述べました。注目したいのは続く一言です。x86だろうとArmだろうとRISC-Vだろうと、どのCPUアーキテクチャが選ばれてもほぼすべてTSMCの顧客だ、と。どの陣営が勝っても自社が儲かるという、ファウンドリならではの立ち位置を隠していません。ウェイ氏はまた、AI産業という新しい産業の誕生を目の当たりにしているとも語り、影響は自動車やヒューマノイド、ロボティクスまで広がるとの見方を示しました。CPU顧客に対しては、最先端技術と必要な生産能力の両面で緊密に支援していくとのことです。
エージェントAIがCPUを必要とする理由
推論や学習の主役はGPUですが、AIエージェントは違います。タスクを分解し、ツールを呼び出し、結果を判断して次の行動を決めるという逐次処理の塊で、この制御部分を担うのはCPUです。エージェントが常時動き続けるようになると、GPUサーバーに載るCPUの数も質も引き上げられていきます。TSMCはこの需要を確信したようで、2026年の設備投資額を600億〜640億ドルへ引き上げ、通期の売上成長見通しも米ドルベースで40%超としました。
PCユーザーへの波及
データセンターの話に聞こえますが、無関係ではいられません。AMDのRyzenも、Intelが外部委託するチップレットの一部も、同じTSMCの先端プロセスの取り合いに参加しています。AI向けの大口顧客が高い単価で先端キャパシティを押さえるほど、コンシューマ向けCPUやGPUの製造枠は圧迫され、価格に跳ね返りやすくなります。実際、この1年でメモリもCPUも値上げの話題が続いています。決算の好調は、PCパーツがしばらく安くならないことの裏返しでもあるわけです。新製品の発売時期や値付けのニュースを読むときも、TSMCの決算は半年先を占う先行指標として使えます。
まとめ
TSMCの2026年第2四半期は、売上402億ドルと粗利率67.7%という記録ずくめの決算でした。エージェントAIがCPU需要を押し上げているというウェイ氏の発言は、GPU一辺倒だったAIインフラの流れが変わりつつあるサインといえます。CPU需要の受け皿を巡っては、NVIDIAのVeraやArm自社設計チップの動きも活発です。関連記事もあわせてどうぞ。
