最先端の2nmチップを作れる会社は、世界にほんの数社しかありません。そこに日本のRapidusが価格で殴り込むという報道が出ました。日経新聞発の情報として、2nmウエハーを1枚あたり300万〜350万円、ドル換算で約2万ドルにする方針だと伝えられています。TSMCの2nmは3万ドル前後とされるので、額面通りなら3分の2の価格です。本記事では報道の中身と競合との比較、そして2027年量産開始までに残る課題を整理します。強気な価格の背景がわかれば、日本の半導体復活が現実的な話かどうか、自分なりの答えを持てるはずです。

報道された価格設定

TrendForceがまとめた日経報道によると、Rapidusは2nmクラスのウエハーを1枚300万〜350万円で提供する計画のようです。現在の為替レートで約18,500〜21,500ドルに相当します。社長の小池淳義氏は、TSMCと少なくとも同等か、やや下回る価格を目指すと語ったと報じられています。公式のプレスリリースで確定した数字ではない点は押さえておきましょう。あくまで報道ベースの計画値です。

競合ファウンドリとの価格比較

業界筋の推定として伝えられている各社の先端ウエハー価格は次の通りです。

ファウンドリ プロセス 推定価格
TSMC 2nm 約30,000ドル
Intel 18A 約30,000ドル
Samsung 2nm 約20,000ドル
Rapidus 2nm 約18,500〜21,500ドル(報道)

Samsungとほぼ同じ水準で、TSMCとIntelを大きく下回る設定です。ただしウエハー単価だけでは語れない要素があります。歩留まりです。1枚のウエハーから取れる良品チップの数が少なければ、チップ1個あたりのコストはむしろ高くつきます。後発のRapidusにとって、この歩留まりこそが価格戦略の生命線になります。

価格情報の出どころ

今回の数字は、性質の異なる報道の組み合わせです。Rapidus自身の価格方針と商談状況は、日経新聞が小池社長への取材をもとに報じました。TSMCやIntel、Samsungの価格は、韓国メディアのBusiness PostやChosun Bizが業界筋の推定として伝えた数字です。1.4nmや第2工場の話は読売新聞の報道がもとになっています。どれも当事者の公式発表ではないため、実際の契約価格は顧客や数量で変わると考えるのが自然でしょう。それでも複数媒体の推定が同じ水準を指している点は、確度を測る材料にはなります。

2027年量産までの日程

Rapidusは北海道千歳市の工場IIM-1で2025年からパイロットラインを動かしており、2nmの量産開始は2027年の予定です。その先には2029年の1.4nm世代という目標も掲げられ、千歳での第2工場の計画も報じられています。量産開始まで1年強。TSMCが同じ2nmですでに量産を回している中、2年遅れのスタートをどう埋めるかが問われます。

60社超との商談

顧客獲得の面では、60社を超える企業と商談中で、その大半が海外企業だと伝えられています。具体的な顧客名はまだ出ていません。先端プロセスの顧客は設計コストだけで数百億円を投じるため、実績のないファウンドリへの発注には慎重です。最初の量産顧客を公表できるかどうかが、Rapidusの信頼性を測る次のマイルストーンになるでしょう。受託製造は装置の稼働率で損益が決まる商売なので、初期の大口顧客を取れるかどうかは価格戦略そのものの成否に直結します。

割安価格が意味するもの

TSMCの直近決算は粗利率67.7%と、先端プロセスの需要過熱を示しました。AI向けの需要で先端キャパシティの取り合いが続く今は、第2、第3の供給元を求める顧客にとってRapidusの価格は十分魅力的に映ります。一方で、安さを打ち出さなければ顧客を引き込めない後発の立場も、この価格には透けて見えます。なお、歩留まりに関する情報は今回の報道には含まれていません。ウエハーが安くても歩留まりが低ければチップ単価では逆転されるため、ここは今後の注目点です。日本政府の支援を受けた国家プロジェクトとしては、まず1社でも量産実績を作れるかが勝負どころです。熊本のTSMC工場が担う成熟プロセスと違い、Rapidusが狙うのは最先端そのものです。国内で2nmを作れるようになれば、機微な用途で国産チップを選ぶ選択肢も生まれます。

まとめ

Rapidusの2nmウエハーが約2万ドルという報道は、TSMC一強の先端ファウンドリ市場に価格競争を持ち込む話として注目に値します。確定情報ではないものの、Samsung並みの価格で2027年量産を狙う姿勢は明確になりました。先端プロセスを巡る各社の動きは、IntelのHigh-NA EUV導入や18Aの歩留まり改善など、関連記事でも追っています。あわせてご覧ください。