AMDのサーバーCPU「EPYC 9006 Venice」は、コア数だけでなくメモリと入出力の設計も大きく変えています。最大256コアという数字は目を引きますが、サーバーを選ぶ際には16チャネルのメモリやPCIe 6.0が何を変えるのかも知りたいところです。
ServeTheHomeが9月25日に公開した設計解説を手掛かりに、AMDの製品情報と照合しました。公表済みの仕様と、製品写真から読み取った推定を分け、Veniceの構成を整理します。
EPYC 9006 Veniceのコア構成
AMDはZen 6を使う高クロック構成と、Zen 6cを使う高密度構成をEPYC 9006シリーズに用意しています。AMDの公式仕様一覧では、EPYC 9996が256コア・512スレッド、L3キャッシュ1,024MB、最大ブースト4.1GHzと記載されています。大量の仮想マシンや並列処理を一つのCPUへ集める用途を意識した構成です。
ServeTheHomeは、公開済みの高クロック構成が最大96コア、高密度構成が最大256コアであると整理しています。応答時間を重視する処理は高クロック型、多数の仕事を並列実行する処理は高密度型が候補です。二つの構成は、サーバーで動かす仕事の性質に合わせて選べます。
1チップレット当たりのコア数
ServeTheHomeはAMDが示した製品写真を基に、高クロック型のCCD(CPUコアを載せる小さなダイ)は1基当たり12コアではないかと推測しています。一方、AMDは記事公開時点でCCDごとのコア数を正式な仕様として示していません。12コアという値は製品写真からの読み取りであり、公式仕様の256コアやメモリチャネル数とは確度が異なります。
L3キャッシュとパッケージ
EPYC 9996のL3キャッシュは公式仕様で1,024MBです。256コアで割ると1コア当たり4MBとなり、全コアを同時に使う構成でもデータをCPUの近くに置く容量を確保しています。頻繁に参照するデータが大きい処理では、L3キャッシュ容量がメモリアクセス回数に影響します。
ServeTheHomeは公開されたパッケージ画像を読み、高性能版にCCDを複数載せ、入出力用のIODを二つに分けた構成を紹介しています。IODの分割がNUMAの見え方やアプリケーション性能にどう作用するかは、AMDの詳細資料や実機検証を待つ段階です。ここで確実に分かるのは、CPUコアの増加に合わせて入出力側のチップレット構成も拡張されたという点です。
16チャネルメモリの設計
AMDは最大16チャネルのDDR5、MRDIMM最大12,800MT/sへの対応を公表しています。前世代EPYC 9005の12チャネルから、メモリを並列に読み書きする経路が4本増えました。大量のコアを積んでも、データ供給が追い付かなければ計算資源を使い切れません。チャネルの増加は、高密度CPUを支えるプラットフォーム側の変更です。
公式仕様ではRDIMMが最大8,000MT/s、MRDIMMが最大12,800MT/sで、対応する理論メモリ帯域はそれぞれ最大1,024GB/s、1,638GB/sです。後者はおよそ1.6TB/sに当たります。データベースやインメモリ処理でどれだけ効くかは、使うソフトのメモリアクセス特性で決まります。
16チャネルの利点は、帯域だけでなく容量を積む際の構成にもあります。各チャネルにDIMMを配分できるため、メモリを大量に使う仮想化ホストや分析基盤で、搭載容量と転送速度を同時に設計できます。実際の上限はCPU型番とサーバーボードのDIMMスロット構成によるため、Venice対応サーバーの製品仕様が選定材料になります。
PCIe 6.0とサーバー側の変更点
EPYC 9006はPCIe 6.0に対応します。GPU、ネットワークカード、ストレージなどを接続する入出力経路を更新し、サーバー全体のデータ移動を支える仕様です。ServeTheHomeはCXL 3.1への対応にも触れています。CPU単体のコア数が増えるほど、周辺機器との通信とメモリの構成も一体で考える必要があります。
プラットフォーム面では、EPYC 9996の対応ソケットはSP7です。AMDの仕様一覧にある同モデルの標準TDPは600W。前世代の最大500W級より高い電力枠を使い、多数のコアと広いメモリ帯域を組み合わせます。ラックの電力密度や冷却能力に直結するため、サーバーの更新ではCPUだけでなく筐体側の条件も変わります。
公表仕様から見た位置付け
Veniceの要点は、256コアを載せたCPUと、16チャネルメモリ・PCIe 6.0を使う新しい基盤を同時に用意したことです。EPYC 9996の最大コア数、キャッシュ、TDPはAMDが公式に掲載しています。CCD当たりの12コアという値はServeTheHomeが製品写真から推定したものです。
性能の比較に関心がある場合は、EPYC 9996とNVIDIA Veraの公開ベンチマークを整理した記事もご覧ください。今回の設計情報とメーカー公表値を並べると、コア数や帯域がどの処理で意味を持つかを追いやすくなります。
