国産CPU「FUJITSU-MONAKA」はいつ、どのような形で使えるようになるのでしょうか。富士通は2026年9月14日、144コアのArmサーバーCPUと、そのCPUを搭載する「Fujitsu MONAKA Server」の販売計画を正式に発表しました。

富士通の発表によると、プロセッサー単体とサーバーの販売は2026年11月に始まります。一方、サーバーの一般出荷は2027年4月以降です。この記事では、2nmと5nmを組み合わせた3D積層設計、最大3.8GHzの仕様、AI推論向け機能、製品構成、導入までの日程を整理します。販売開始と実際の出荷時期を分けて確認すると、MONAKAがデータセンターへ入るまでの道筋が見えてきます。

FUJITSU-MONAKAの発表概要

富士通はFUJITSU-MONAKAを、クラウド事業者、データセンター事業者、サーバーベンダーへ単体で販売します。自社サーバーへの搭載に加え、ほかの事業者がサーバーやサービスを設計するためのプロセッサーとしても展開する計画です。販売地域は日本と欧州から始まり、CPU単体は米国やアジア太平洋地域を含むグローバル展開が予定されています。

同時に発表したFujitsu MONAKA Serverは、国内で設計・開発し、石川県かほく市の笠島工場で製造するサーバーです。富士通は部品の出所と製造履歴を追跡できる体制を整え、国内でデータや運用を管理するソブリンAI基盤として売り出します。ITmediaの報道でも、金融、通信、製造分野への先行提供と国内製造の狙いが確認できます。

発表の要点は次のとおりです。

項目 発表内容
CPU FUJITSU-MONAKA、1ソケット144コア
命令セット Armv9-A、SVE2、Arm CCA
製造・実装 2nmコアダイと5nm SRAM/I/Oダイの3D積層
最大動作周波数 3.8GHz
メモリ DDR5、12チャネル、最大8800MT/s
拡張規格 PCI Express 6.0
販売開始 2026年11月
サーバー一般出荷 2027年4月以降、日本・欧州から順次

144コアArm CPUの主要仕様

富士通の製品ページは、FUJITSU-MONAKAを1ソケット144コアのArmv9-A CPUとしています。2ソケット構成なら1ノードで288コアです。多数の処理を並列に走らせるクラウド、データベース、科学技術計算、AI推論を主な対象に据えています。

メモリは12チャネルのDDR5に対応し、今回の発表で最大転送速度が8800MT/sと示されました。コア数を増やすだけでは、各コアへデータを届ける帯域が不足します。12チャネル構成と高速なDDR5は、144コアを同時に動かす際のデータ供給を支える設計です。PCI Express 6.0にも対応し、ネットワーク、ストレージ、GPUなどのアクセラレーターを接続できます。

最大動作周波数は3.8GHzです。144コアという密度と高い周波数を両立させ、処理を大量に並べるスループット型の用途だけでなく、1処理あたりの応答速度が問われる企業向けワークロードも狙います。具体的なSKU、消費電力、価格は今回の発表では公開されていません。

2nmと5nmの3D積層設計

FUJITSU-MONAKAは、演算を担うコアダイに2nmプロセス、SRAMキャッシュとI/Oダイに5nmプロセスを使います。コアダイとSRAMダイを縦方向に積層し、シリコンインターポーザー上でI/Oダイへ接続する構成です。

最先端の2nmプロセスは、高密度化と省電力化の効果が大きい演算コアへ絞っています。キャッシュと外部接続には用途に合う5nmを割り当て、コストと性能の均衡を取る設計です。キャッシュをコアの近くへ積層することで、多数のコアが共有データへアクセスする経路も短くできます。

この構成は、従来の「富岳」向けA64FXとも異なります。FUJITSU-MONAKAは汎用サーバーへ展開しやすいDDR5とPCI Expressを採用し、Armサーバーのソフトウェア環境でAI、HPC、企業システムを動かす方向へ広げました。Arm系データセンターCPUの別の設計例は、最大128コアのNeoverse CSS N4でも確認できます。

AI推論とコンフィデンシャルコンピューティング

富士通はAI推論の行列演算を専用命令で支援し、ArmのSVE2ベクトル演算とソフトウェア最適化を組み合わせます。GPUを使う大規模学習よりも、業務アプリとの連携、データの前処理と後処理、小規模から中規模のモデルを動かすCPU推論が主な役割です。

同社はAI推論で他社CPU比2倍のスループットを公表し、同等の処理量に必要なサーバー台数と消費電力を半減できると説明しています。発表資料には比較対象のCPU名やモデル、ベンチマーク条件が示されておらず、2倍という数字は富士通の公表値です。製品出荷後には、対応ソフトウェアを含む同一条件での第三者測定が性能判断の基準になります。

セキュリティ面ではArm Confidential Compute Architecture(CCA)に対応します。メモリ上で処理中のデータとアプリケーションをハードウェアで保護し、OSやハイパーバイザーの管理権限からも分離する仕組みです。複数顧客が同じクラウド基盤を共有する環境で、機密データを使うAI推論や業務処理を動かしやすくします。

Fujitsu MONAKA Serverの製品構成

Fujitsu MONAKA Serverには、ソブリン用途とHPC用途に向けた複数の筐体があります。クラウド Watchの報道は、次の構成と冷却条件を伝えています。

  • 2Uラックマウント:2CPU構成
  • 1Uラックマウント:1CPUまたは2CPU構成
  • 2Uマルチノード:1ノード2CPU、合計4ノードのHPC向け構成

1UモデルはCDI/CXL技術を採用し、筐体の外にあるメモリやアクセラレーターを複数のサーバーから利用できるようにします。AIモデルの拡大に合わせてメモリを共有し、使っていない資源を別のサーバーへ割り当てる構成を作れます。

冷却は空冷と水冷の両方を想定しています。富士通の公表条件では、1Uモデルは空冷で周囲温度40度、水冷で水温45度まで動作し、サーバー冷却の電力を最大80%削減します。CPU推論、外部GPUとの組み合わせ、設置場所の冷却設備に応じて構成を選べる製品群です。

Arm CPUを自社製品として供給する動きは富士通だけではありません。Arm AGI CPU搭載サーバーや、欧州で開発が進むSiPearl Rhea1も、データセンター向けCPUの選択肢を広げています。MONAKAは日本での設計・サーバー製造と、CPU単体での外販を組み合わせる点が特徴です。

販売開始と一般出荷のスケジュール

今回の日程では、「11月に販売開始」と「2027年4月以降に出荷」が別の段階を指します。IT Leadersの整理によると、2026年度下期から金融、通信、製造分野の一部顧客へ先行提供し、日本と欧州での一般出荷は2027年4月以降に始まります。

時期 予定
2026年11月 CPU単体とFujitsu MONAKA Serverの販売開始
2026年度下期 金融・通信・製造分野の一部顧客へ先行提供
2026年度第4四半期 CPU単体をクラウド・データセンター・サーバーベンダーへ提供、米国とアジア太平洋にも展開
2027年4月以降 日本・欧州でサーバーを順次出荷

11月は受注や商談を始める節目であり、一般顧客へハードウェアが届くのは2027年度に入ってからです。導入を検討する事業者にとっては、価格、SKU別の消費電力、OSと仮想化基盤の対応、実アプリでの性能が次の確認項目になります。

FUJITSU-MONAKA発表のまとめ

富士通は144コアのArmv9-A CPU「FUJITSU-MONAKA」と国産サーバーを正式発表し、2026年11月から販売を始めます。コアダイへ2nm、キャッシュとI/Oへ5nmを使う3D積層、最大3.8GHz、DDR5-8800、12チャネルメモリ、PCI Express 6.0が技術上の柱です。

AI推論性能と省電力性の公表値は、製品出荷後の第三者検証で具体性が増します。まずは先行顧客への提供、2027年4月以降の一般出荷、ソフトウェア対応の進展が注目点です。Armサーバー市場全体の動向を追うなら、Neoverse CSS N4の仕様解説もあわせてご覧ください。