AMDは米国時間の2026年10月12日、エージェントAI向けのラック設計「AMD Helion」を発表しました。第6世代EPYCを並べるCPU専用構成では、ラック当たり最大3万2768のZen 6コアを搭載できます。企業向けにはCPUとInstinct GPUを同じラックに収める構成も用意します。
Helionは、AMDの参照設計を基にサーバーメーカーが用途に合わせて構成するラックの基盤です。既存のGPU中心ラック「Helios」とどう役割が違うのか、AMDの発表と製品ページから整理します。
Helionの発表内容
AMDはHelionを、Open Compute Project(OCP)の規格に基づくオープンなラック設計と説明しています。CPUブレードの種類、GPUの有無、空冷・直接液冷を組み合わせ、AIエージェントが担う作業量に応じて構成を変えられます。仕様をOCPへ提供し、メーカー各社による開発と採用を進める計画です。
構成の柱は2つあります。大規模な事業者向けのCPU専用ラックは、エージェントの実行環境を多数収容し、モデル推論を行う別の設備に接続します。企業向けの一体型ラックは、EPYC CPUノードにInstinct MI350P GPUノードと汎用計算ノードを加え、エージェントの実行、推論、データ処理を1ラック内にまとめる想定です。
AMDの公式仕様には21インチ、44OUのラック、最大16基のMI350P、最大102Tbpsのネットワーク帯域が掲載されています。CPU専用と一体型でブレードの配分が異なるため、最大コア数・GPU数・帯域は構成ごとの仕様です。
EPYCを使うCPU専用構成
最大3万2768コアという数字は、256コアのEPYCを128基搭載する計算と一致します。Tom’s Hardwareの発表会取材も、この128基構成を示しています。3万2768コアは、1ラックのCPU搭載密度を示す設計値です。
エージェントAIでは、モデルの呼び出しに加え、コード実行、ツール呼び出し、データ取得、隔離された作業環境の管理などが発生します。AMDは大量のエージェントを処理するCPU専用ラックを、別の推論システムとつなぐ構成として説明しました。GPUをすべての作業に割り当てる設計とは異なり、CPU上で動く処理をまとめて受け持たせます。
AMDの構成例では、密度重視の256コア・400W、バランス重視の256コア・600W、高クロック重視の96コアというブレードを挙げています。最後の高クロック型には最大5.0GHzという値も掲載されています。処理を細かく大量に並べる場合と、個々の処理速度を重視する場合で、同じEPYC 9006世代から異なる構成を選べる設計です。ラック全体の消費電力とエージェント処理件数は公表されていません。
CPUとGPUを組み合わせる一体型
企業向け構成では、EPYC 9006のCPUブレードにMI350Pの推論用GPUブレードを加えます。AMDの製品ページは、データベースとストレージ向けの汎用ブレードにもEPYCを採用すると説明しています。モデル呼び出し、エージェントの実行、データ処理を同じラックに配置する考え方です。
AMDの製品ページには、エージェントからの推論要求をクラウド側のモデルとラック内のオープンモデルへ振り分けるトークンルーターも示されています。どのモデルへ送るかというソフトウェア上の制御まで含めて、AMDはHelionを提案しています。推論速度や運用費用は、採用するGPU数、ネットワーク、使用モデル、負荷で変わります。
Heliosとの役割の違い
名称の似た「Helios」は、AMDがすでに展開しているGPU中心のAIラック設計です。大規模な学習や推論に使うInstinct GPUとEPYC CPU、ネットワークをラック単位で統合します。Helionはエージェント実行を担うCPUの配置を中心に設計し、用途に応じて同じラックへGPUも追加します。
大規模推論をHeliosのようなGPUラックで受け持ち、HelionのCPU専用ラックで多数のエージェント実行環境を管理する配置が考えられます。企業の設備では、Helionの一体型構成でCPUとGPUをまとめる選択肢があります。AMDの説明に沿うと、違いはCPU・GPUの役割分担と、必要な設備規模にあります。
提供予定と今後の確認点
AMDの10月12日付発表では、パートナーと構成を開発中で、2026年11月からの提供を計画しています。対応を表明した企業にはDell、HPE、Lenovo、Supermicroなどが含まれます。
実際の処理能力は、EPYCの型番と搭載数、冷却方式、エージェントへのCPU・メモリ割り当て、外部推論基盤との通信条件で変わります。AMDは今回、Helion全体の統一ベンチマークや導入価格を発表していません。
まとめ
Helionは第6世代EPYCを軸にしたエージェントAI向けラック設計です。CPU専用の最大3万2768コア構成と、MI350Pを組み込む企業向け一体型構成を用意し、AMDは2026年11月からの提供を計画しています。各社の製品が公開するCPU数、GPU数、冷却方式によって構成の狙いが具体的になります。
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