米クラウド事業者Vultrが、AMD EPYC「Venice」を搭載するAIラック「Helios」の初の発注企業となりました。HPEは2026年9月30日、Vultrから12億ドルの発注を受けたと発表しています。発注の中身とCPUの位置付けを、HPE・AMDの発表と現地取材をもとに整理します。

VultrによるHelios発注の内容

VultrはHPE製のAMD Helios AI Rackを米国内のクラウドデータセンターへ導入する計画です。Vultrは学習と推論の両方に使えるAI計算基盤を拡充する方針を示しました。

12億ドルはラック全体の発注額です。HPEはGPU、CPU、ネットワーク、冷却、導入サービスを組み合わせて提供します。現地でHPEの投資家向け説明会を取材したFierce Networkによると、ネットワーク機器が占める金額や、ラックの発注台数は公表されていません。EPYC単体の売上額も未公表です。

HPEとAMDは2025年12月にHelios向けシステムの共同開発を発表していました。当時の発表はHPEによる製品提供の計画で、今回はVultrから具体的な発注が入りました。

Vultrの既存AI基盤との関係

Vultrは以前からAMDのInstinct MI325XとMI355Xをクラウド基盤に採用しています。Fierce Networkの取材によると、VultrはHPEが組み立てるNVIDIAベースのラックも発注済みです。今回のHelios発注で、VultrはAMDベースのラックシステムを同じHPEの供給網から調達することになります。

HeliosではMI455Xをラック単位でまとめ、EPYC Venice、ネットワーク、冷却を一体で導入します。個々のGPUを増やすだけでなく、ラック内部のGPU間接続まで含めて導入する点が、今回の発注で公表された具体的な内容です。HPEは既存のJuniper Networkingとの協力関係を生かし、ラック内接続用のスイッチも供給します。

HeliosラックとEPYC Veniceの構成

HPEの構成説明では、Heliosの各ラックにAMD Instinct MI455X GPUを72基配置し、ホストCPUにAMD EPYC「Venice」を採用します。AMD Pensando Vulcano AI NICとROCmソフトウェアも同じ基盤を構成します。HPEはラック内の72基のGPUを接続するため、Juniper Networking QFX5252のスイッチトレーを6基組み込みます。

構成要素 公表された内容 主な役割
CPU AMD EPYC「Venice」 サーバー側の処理を担当
GPU AMD Instinct MI455Xを72基 AI学習・推論の演算を担当
ラック内ネットワーク HPE Juniper QFX5252を6トレー 72基のGPUを接続
ソフトウェア AMD ROCm GPUを利用する計算基盤

AMDは2025年の共同発表で、EPYC CPU、Instinct GPU、Pensandoネットワーク機器、ROCmをHeliosの主要要素として挙げています。GPUがAIモデルの大規模な演算を受け持つ一方、EPYCはサーバーのホストCPUとしてシステムとデータ処理を支えます。

HPEはラック内のGPU間接続に**UALink over Ethernet(UALoE)**を採用すると説明しています。ラック内でGPUを結ぶ「スケールアップ」と、ラック間を結ぶ「スケールアウト」は別の接続です。HPEのQFX5252はラック内のGPU間接続を担当し、AMD PensandoのNICはラック間接続に使われます。Fierce Networkも両者の役割を区別して報じています。

公表済みの範囲と今後の焦点

今回明らかになったのはVultrによる発注と、HPEが納めるラックの基本構成です。Fierce Networkの現地報道によると、ラックの台数と個別の納入日は未公表。Vultr上でのサービス開始時期や、搭載するEPYCの総数も分かっていません。

AMDとHPEは2025年の段階からHeliosを2026年に提供する計画を示していました。今後は納入台数、導入するデータセンター、サービスの提供開始時期が焦点になります。台数が明らかになれば、EPYC Veniceの導入規模も分かります。

まとめ

HPEはVultrからAMD Helios AI Rackを12億ドルで初受注しました。ラックは72基のMI455X GPUとEPYC Venice CPUを組み合わせ、HPEのスイッチがGPU間を接続します。EPYC Veniceそのものの仕様を知りたい方は、関連記事のEPYC 9006の設計解説と全モデルの価格一覧もご覧ください。