AMD Ryzen Threadripper 9980Xの電源を決める際、CPUの「TDP 350W」をPC全体の消費電力と同一視すると容量が足りません。GPU、マザーボード、メモリ、ストレージも電力を使います。公式仕様、実測、仮定したGPU構成を分け、電源ユニットの容量を計算します。

350Wの位置づけ

AMDの公式仕様が示す9980XのTDPは350Wです。これはCPUに関する設計上の値で、コンセントからPC全体が常に350Wを使うという数字ではありません。CPUレンダリングのように多数のコアを使う負荷と、GPU中心の処理やアイドルでは消費電力が変わります。CPUとGPUを同時に長く動かす制作環境では、両者の予算を足します。

PC Watchの独立測定は、コンセント側のワットチェッカーでPC全体を計測しました。9980Xを載せたテスト機のアイドル最小値は124.1W、9970Xは116.0W、比較したRyzen 9 9950Xは92.2Wです。この差にはCPUだけでなくTRX50プラットフォーム全体の構成差も含まれます。同レビューではCPU中心のベンチマーク中にシステムが500Wを超える場面も観測されました。

さらにCinebench 2024マルチコア実行中、PC Watchが記録した9980XのCPU消費電力は350W上限に達しました。全体500W超とCPU350Wは測る場所が違います。全体の実測をそのままCPU単体へ割り当てると、GPUや変換損失、他の部品の分までCPUへ加算してしまいます。

GPU別の容量計算例

電源容量は、同時に起こり得る最大負荷を見積もり、継続負荷や瞬間変動へ余裕を持たせて選びます。以下のGPU値と「その他100W」は計算用の仮定で、特定製品の実測ではありません。GPUを買うときは採用するカードの公式TBP/TGP値に置き換えます。

想定構成 CPU GPU仮定 その他仮定 単純合計 25%余裕を含む目安
中型GPU 1枚 350W 300W 100W 750W 938W
大型GPU 1枚 350W 450W 100W 900W 1,125W
高出力GPU 1枚 350W 600W 100W 1,050W 1,313W

余裕欄は単純合計を1.25倍して切り上げた数字です。電源製品の定格に合わせると、300W級GPUの構成は1000W級、450W級は1200W級、600W級は1400〜1600W級が候補になります。GPUを2枚にするなら、各カードの消費電力を加算して同じ計算をやり直します。電源を選ぶ決定値は、実際のGPU型番と他の拡張カードの仕様で確定します。

実測とのつながり

PC WatchのCPU中心テストでシステムが500Wを超える結果は、上表のCPU350W+その他100Wという仮定と大きく矛盾しません。ただし実測機にはGPU、ファン、メモリ、SSDがあり、電源効率によるコンセント側の損失も含まれます。上表はPSU出力側の部品予算に近い概算であり、コンセントの読みと完全一致する式ではありません。

Puget Systemsの検証機は、9980XとGeForce RTX 5080を組み合わせ、1200W電源を採用しています。1200Wは同社の実機構成例に採用された定格です。CPUレンダリングのみを多用するPCと、GPUレンダリングも同時実行するPCでは電源の要件が違います。

コネクタと常用負荷

ASUS Pro WS TRX50-SAGE WIFIの仕様はCPU用8ピン電源コネクタを2本備えます。選ぶ電源に必要なEPSケーブルが付属し、GPU用の補助電源ケーブルもカードの指定どおり用意できるかを照合します。ワット数だけ足りても、必要な電源ケーブルやコネクタが不足すれば完成しません。

350Wを長く消費するCPUと高出力GPUを同時に使うなら、ケース内の排熱と電源周辺の吸気も見込みます。PSU定格は装置が供給できる最大出力で、常時その電力を消費するという意味ではありません。実際の電気代を求めるなら、想定作業のコンセント側電力と使用時間を掛けます。

9980XではまずGPUの公式消費電力を決め、CPU350Wとその他の部品を加算し、余裕を見た定格へ丸めます。冷却装置まで含む構成はCPUクーラーの選び方で確認できます。