AMD Ryzen Threadripper 9980Xは64コアですが、Premiere Proのすべての編集操作で32コア版を上回るわけではありません。扱うコーデックと書き出し方式によってCPUの仕事量が変わります。独立した2媒体の実測を分けて読み、動画編集用PCで9980Xを選ぶ条件を整理します。
総合スコアの位置づけ
Puget Systemsの検証はPremiere Pro 25.2.3とPugetBench 1.1.1を使用しました。総合スコアで9980Xは前世代7980Xより19%高く、同世代9970Xより4%低い結果です。Pugetは9980Xと9970Xの4%差を測定誤差の範囲とみています。64コアの追加分は、この総合テストでは購入費に比例する利点を示しませんでした。
TechSpotのPremiere Pro 2024テストでは、9980Xは7980Xより3%高い結果です。Pugetの19%とTechSpotの3%は同じ測定ではなく、バージョン、素材、設定、テスト項目の違いを含みます。両レビューの条件は異なるため、業務で使う形式に近い測定項目を判断材料にします。
コーデック別の違い
Pugetは総合スコアをLongGOP、イントラフレーム、RAW、GPUエフェクトなどに分けています。LongGOPではCore Ultra 9 285Kが109、Threadripper 9000の3機種が103というスコアでした。Pugetは、検証したPremiere Pro版が新しいNVIDIA Blackwellのメディア機能に完全対応していない条件も説明しています。この項目はコーデックのハードウェア支援が順位に強く影響します。
イントラフレームでは9980Xが7980Xを31%上回りました。同じ項目の最高位は9970Xです。RAWでは9970Xが9980Xより5%高い結果でした。高コア数が効く処理もある一方、9970Xの方がスコアの高い領域があります。使うカメラ素材がどの形式かで、必要なCPU性能の内訳は変わります。
| Pugetの測定項目 | 9980Xに関する結果 | 購入判断への意味 |
|---|---|---|
| 総合 | 7980X比19%増、9970X比4%低い | 新世代への更新効果はあるが64コアの利点は小さい |
| LongGOP | Threadripper 9000系は103 | メディア支援とソフトの版が効く |
| イントラフレーム | 7980X比31%増 | 世代更新の利点が大きい |
| RAW | 9970Xが9980Xより5%高い | 32コア版も有力 |
64コアを活用する制作環境
Premiere Proだけを動かすPCなら、Pugetの結果は9970Xを強く支持します。9980Xを選ぶ理由は、編集と同時に別のCPUレンダリング、エンコード、シミュレーションを進める運用にあります。制作会社で複数案件を並行させ、別アプリが大量のコアを占有するなら、64コアを一台に集約する価値が出ます。
逆にGPUが担うエフェクト、ハードウェアデコードやエンコードが主なら、CPUコアを倍増しても作業時間を半減できません。Premiere Pro用PCの予算は、CPUだけでなくGPU、素材用の高速ストレージ、作業領域となるメモリにも配ります。AMDの仕様によれば9980Xは内蔵GPUを持たないため、少なくとも外部GPUが必要です。
メモリとストレージの構成
Pugetのテスト機は128GBのDDR5-6400 ECC RDIMM、GeForce RTX 5080、360mm水冷を採用しました。この構成で得たスコアを、少ないメモリ容量や別のGPUのPCにそのまま移すことはできません。複数の高解像度素材を同時に扱うなら、メモリ使用量とキャッシュの置き場所が編集の反応を左右します。空き容量のある高速SSDを素材・キャッシュに割り当て、GPUのメディア対応も選定材料にします。
動画編集用としての結論
Premiere Proの総合スコアだけを根拠に9980Xを買う判断は弱く、9970Xが有力です。9980Xが合うのは、Premiere Proを使いながらBlenderなどのCPU負荷を大量に回す複合ワークステーション。動画編集のみなら、使用コーデックに近い実測とPC全体の部品配分で決めます。64コアと32コアの価格・性能差も併せて見られます。
