AMD Ryzen Threadripper 9980XとAMD Ryzen Threadripper 9970Xは、同じTRX50を使う64コアと32コアです。購入額には大きな差がありますが、仕事による速度差は一定ではありません。CPUレンダリングを重視するか、動画編集や普段の操作を重視するかで選択が変わります。
コア数と価格の違い
AMDの発表仕様では、9980Xが64コア・128スレッド、9970Xが32コア・64スレッドです。L3キャッシュはそれぞれ256MBと128MBです。最大ブーストは双方5.4GHz、TDPも双方350Wですが、ベースクロックは9980Xが3.2GHz、9970Xが4.0GHzです。AMDの発売時希望価格は9980Xが4,999ドル、9970Xが2,499ドルで、ほぼ2対1の設定です。
| 項目 | 9980X | 9970X |
|---|---|---|
| コア/スレッド | 64/128 | 32/64 |
| ベース/最大ブースト | 3.2/5.4GHz | 4.0/5.4GHz |
| L3キャッシュ | 256MB | 128MB |
| TDP | 350W | 350W |
| AMD発売時希望価格 | 4,999ドル | 2,499ドル |
同じTDPでも、9970Xの電源や冷却を半分にできるわけではありません。長時間の全コア負荷で双方が350Wへ達する条件を想定し、sTR5用冷却装置と電源を選びます。CPU代の差が最も大きい費用差です。
レンダリングの性能差
Puget Systemsの同一テストでは、Cinebench 2024マルチコアで9980Xが6,339点となり、9970Xを61%上回りました。Blender 4.4のCycles CPUレンダリングでは71%、V-Ray CPUでは70%高いスコアです。どれも多数のコアを継続利用する処理で、64コアを買う理由が数字に表れます。
処理量が71%高いなら、同じCPUレンダリング作業にかかる時間は理論上約42%短縮です。9970Xで60分のシーンなら約35分という計算になります。スコア比から導いた計算例です。シーンの読み込みや保存など並列化しない部分が大きい仕事では、時間差は小さくなります。
CPUレンダリングを毎日何時間も実行する制作会社や個人事業では、その短縮が納品待ちや夜間ジョブの本数に効きます。GPUレンダリング主体の環境では、9980Xの追加コアが主役になる時間が短くなります。制作のどの工程がCPUを占めるかを基準に投資額を決めます。
Premiere Proと編集作業
PugetのPremiere Pro 25.2.3総合スコアでは、9970Xが9980Xを4%上回りました。Pugetはこの差を誤差範囲内とみています。イントラフレームの項目も9970Xが上位で、RAW項目では9970Xが9980Xより5%高い結果でした。編集作業では、コア数以外にコーデックや処理内容がスコアへ影響します。
Premiere Proはデコード、タイムライン、エフェクト、書き出しでCPU負荷が異なります。動画編集が主業務なら、9970Xを選び、差額をGPUや高速ストレージ、メモリ容量へ配分する構成に説得力があります。CPUレンダリングも並行するなら9980Xの利点が増えます。Premiere Proに絞った比較にコーデック別の違いをまとめました。
費用対効果の境界
発売時希望価格をコア当たりで割ると、9980Xは約78ドル、9970Xも約78ドルです。コア数に対して価格はほぼ比例します。一方、PugetのBlender性能は1.71倍で、CPU価格は約2倍です。単純な「価格÷Blender処理量」なら9970Xが有利。9980Xが選ばれるのは、単一PCでより早くジョブを終える価値が、CPUの追加費用を上回る場合です。
日本の実売は変動します。Amazon.co.jpの掲載額を含む価格比較を参考に、実際に注文する段階では9970Xと同時に見積もります。マザーボード、RDIMM、冷却の共通費用が大きいほど、PC全体の価格比はCPU単体の約2倍より小さくなります。レンダリング待ちを短縮したいなら9980X、編集の総合速度と費用を整えたいなら9970Xが軸になります。
